あの翻訳こそ命だった

もうすぐ年末ですが、突然嘘のようなニュースが報じられました。

長年の間、WWE(WWF)を放送してきたCSチャンネル「Jスポーツ」にて、WWEの放送が年内で終了とのことです。

おいおい、エイプリルフールには早いって・・・

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J-SPORTS、WWEから撤退!!?

2021年11月25日、Jスポーツのツィッター公式アカウントより、以下のようなニュースが報じられました。

このツィートのリンク先である公式HPの情報を抜粋すると、

 

「WWEロウ」「WWEスマックダウン」放送終了 及びJ SPORTSオンデマンド「WWEパック」サービス終了のお知らせ

平素よりJ SPORTSをご視聴いただき、誠にありがとうございます。 長年に渡り、全国のWWEファンの皆さまへお届けしてまいりました「WWEロウ」及び「WWEスマックダウン」の英語版/日本語字幕版/ハイライト版の全6番組を2021年12月31日(金)、
「PPV大会」は12月27日(月)をもって当社での放送/配信を終了いたします。

また、動画配信サービス・J SPORTSオンデマンドの有料商品である「WWEパック」につきましては、
2022年1月31日(月)をもちまして終了いたします。

これまでJ SPORTSのWWE番組を長きに渡ってご視聴いただいた皆さまに心より御礼を申し上げます。

 

!!嘘だろ!!

イヤァ━━ヽ(゚Д゚)ノ━━ン!!

 

長年の間、日本にWWEを届けてきたJスポーツがWWEから撤退するのです!!

日本のWWEファンはJスポーツの放送あってこそファンになったと言っても過言ではなく、私もその一人なので悲劇すぎて倒れそうです。

私とWWE(WWF)との出会い

そのファン個人としてWWE(WWF)との出会いをつづります。

アホな子だった何も知らない私のプロレスに対する知識は、キン肉マンと兄貴が持っていたマンガ「プロレススーパースター列伝」のみでした。(いや、十分マニアだぞ)

ギリギリでゴールデンタイムにプロレス放送を見た事がある世代でしたが、それはキン肉マンのような華やかな世界とは違い、リング外は真っ暗の体育館のような場所でやってるイメージでした。

 

時は2000年ぐらい、CS放送が盛んになり我が家にもいつの間にかCSのチューナーがつけられて勝手にCSがTVに流れるようになりました。

CSの意味もよく分からず無駄に多すぎるチャンネルをザッピングしていたらJスポーツが映り、そこで外人レスラーがバックヤードで子芝居をして、そのストーリーの流れで試合が始まるという、斬新すぎるスポーツ娯楽業界に出会ってしまったのです。

それがいわずもがな、当時のWWF。

そこに映る光景は暗い体育館ではなく、客席全面が明るく超満員。観客は立ち上がってボードをあげたり声を自由にあげる、まさにアニメで見た光景がそこにありました。

 

そして主役ともいえるレスラーが、今やハリウッドで一番稼ぐスターとなった”ドウェイン・ジョンソン”である”ザ・ロック”。

オーナーと手を組み団体の権力をわがものとするHHHが率いるの悪の軍団と、オーナーに逆らうザ・ロック、そしてそれを取り巻くクセが強すぎるレスラーたちが織り成すドラマが面白すぎて、私は毎回 爆笑を保証してくれるWWE(WWF)の虜になりました。

 

極めつけはレッスルマニア

毎週見ていると年末ごろからやたらストーリーの中で「レッスルマニア」という単語が出てきました。

当時は簡単にネットで検索なんてこともできませんでしたから、ストーリーの会話から推測するに「レッスルマニアってのは、レスラー誰もが出場を目指している凄い大会らしい」ぐらいしか分からないワケです。

 

毎週のストーリー内でレッスルマニアでの豪華すぎる対戦カードが次々と決まっていき、番組内で煽って煽って煽りまくって、いよいよ楽しみすぎる未知の世界レッスルマニア初放送日。

ワクワクしながらTVをつけると映画のようなオープニング映像が始まり、お決まりのタイトルコール「レッスルッ、メ~~ニア~」、その先に待っていたのは度肝を抜く光景でした。

 

激しい花火と共に映ったのは、広すぎるドームのフィールドからスタンド最上段まで埋め尽くされた人が、わずか5m四方のリングを囲むという異様すぎる光景でした。

これを初めて見た時の衝撃を一生忘れることは無いでしょう。

昔のWWE(WWF)の放送体系

今のWWEの放送とは違い、当時はJスポーツで現地から2週間遅れで字幕がついて、ロウ、スマックダウン、そして月1回のPPV大会がちゃんと時系列に沿って放送されていました。

しかも、今では別料金、別チャンネルのPPVもJスポーツでそのまま見れちゃてたのです!!

なので、2週間遅れとはいえ同じチャンネルで連続ドラマのように時系列ですべてが見れました。

しかもSNSはおろかネット未発達の時代だったので、2週間遅れとはいえネタバレなし。こればかりは非情報化社会のメリットです。

 

加えて、昔のWWEはストーリーの区切りが1か月単位と決まっていたのです。

毎週のロウとスマックダウンで月1回のPPV大会での対戦カードに繋がるストーリーが展開し、そのストーリーのクライマックスがPPV大会で、そこで一旦決着がつきます。

そして次の月からストーリーはほぼリセットされて新ストーリーが始まるという流れであり、ストーリー展開の波が掴みやすかったわけです。

この時系列で見れるWWEを永遠にやって欲しかったのですが、途中からPPVは別料金となったり、WWEネットワークができて一時期はPPVをTVで放送しなくなったり、日本でもLIVE放送が始まり、展開を時系列で追いかけにくくなりました。

これがWWE離れの一つの原因となっています。

日本でのWWE(WWF)ヒットの立役者、翻訳会社ルミエール

JスポーツでWWEを見ていると、最後に必ず画面の端に「翻訳 Lumiere(ルミエール)」という記載が入ります。

この翻訳会社ルミエールこそ、日本人にWWE(WWF)を広めた影の功労者なのです。

 

通常、スポーツの実況を日本語に起こすと堅苦しい機械翻訳的なものになるのですが、このルミエールという会社は違いました。

ザ・ロックのセリフは「ロック様の妙技を味わうがいい!」など、自分を「俺様」づけするキャラに変換したり、ババレイ・ダッドリーというレスラーに関しては「テーブルじゃ~」など播州弁っぽいクセが強すぎる方言に変換するなど翻訳会社がキャラクター付けを行い、さらに難しいと思われるセリフ回しや実況を全て非常に分かりやすく短い文章でまとめるのです。

 

映画ならまだしも、週2回の2時間放送&月1回の3時間以上の大ボリュームの番組に適切な字幕を入れ続けるのは半端ない労力であることは想像できます。

直訳と多少ズレていても、ルミエールの翻訳が正解だと日本のファンは皆考えているでしょう。ルミエールがWWEの世界を作っていると言っても過言ではありません。

 

そのルミエールという会社、私はその手腕から NFL実況の近藤さんのような翻訳のエリート軍団が所属する立派な会社だろうと長年思っていました。

ある日、ルミエールがWWEに翻訳をつけるというドキュメンタリー映像が放送されたのですが、その内容に驚愕しました。

民家で髭ボーボーのロン毛おじさんが、ノートPCで字幕翻訳をつけている!!

 

正直、長年ルミエールに幻想を抱いていた私にとって、近年まれに見るカルチャーショックでした。

しかし、翻訳の難しさを語るその熱意は本物。彼が日本のWWEファン拡大に貢献していることは間違いないのです。

日本語字幕に困ったら ルミエール、ぜひ覚えて帰ってください。

まとめ

ということで主題とズレた「WWEとJスポーツと私」を長くお伝えしてきましたが、現時点でなぜJスポーツがWWEの放送を急遽中止する発表をしたのか、現時点では全く分かりません。

WWEといえば最近のニュースでは選手の大量解雇があり、本社の移設も報じられています。

何よりもWWEジャパン閉鎖という事件の影響が大きいようにも思えます。

さらにWWEはディズニーに買収される噂もあり、そのゴタゴタの最中にJスポーツとWWEの間での来年への契約交渉がコジれたというのが私の見解です。

 

今年はNHKのNFL撤退という悲劇があったばかりなのに、WWEまで国内放送から撤退してしまう悲劇の年。

私は現在WWEを「WWEネットワーク」という米国のネット配信サービスで時々見ているのですが、私のWWE歴を築いてきたJスポーツの撤退は非常に残念です。

 

いつかJスポーツでなくとも、別の形でルミエールの翻訳によるWWE日本語字幕版が復活してくれることに期待しています。