マホームズの倒し方

いよいよ勝てばスーパーボウル、負ければ全てパーのチャンピオンシップのステージです。

AFCの対戦カードは、第1シードのタイタンズを倒して勝ち上がったベンガルズと、4年連続でチャンピオンシップ出場の強豪チーフスとの対戦です。

 

この試合、前半で大差がついて決着がついたかと思いきや、またも予想外の展開が待っていました。

まさに「諦めなければ道は開ける」を体現した内容です。

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スコア&ダイジェスト

ハイライト&データ[GAME CENTER(NFL.com)]

 

1Q

2Q

3Q

4Q

OT

TOTAL

ベンガルズ

3

7

11

3

3

27

チーフス

7

14

0

3

0

24

 

総評

S”タイラン・マシュー”が復帰し、チャンピオンシップに万全を期すチーフス。

最初からマホームズの調子が良く、3シリーズ連続TDを決めて前半で最大18点リードします。

 

一方ベンガルズは、WR”ジャマー・チェイス”へのダブルカバーや、TE”C.J・ウゾマ”の負傷離脱により不利な状況に立たされ、絶望的な空気が流れだします。

そこに伏兵RB”サマジャ・ペリン”が41ydのラン・アフター・キャッチでいっきにエンドゾーンまで駆け抜けてTD。

この不意を突いた一撃がなければ、前半でベンガルズは終わっていたでしょう。

 

そして前半最大のターニングポイントは、チーフスがまたも”アンディ・リード”のタイムマネジメントミスにより、FGを蹴るチャンスをパーにしたこと。

残り13秒でチーフスは敵陣15ydに進んだところでタイムアウト0。ベンガルズCB”イーライ・アップル”がWR”タイリーク・ヒル”へのパス・インターフェアランスにより、敵陣1ydのところで残り9秒。

 

もしランを止められたら時間切れで前半終了となるので、パスを選択するも失敗し、残り時間は5秒。

普通であればFGを選んで3点追加してもおかしくはないシーンですが、チーフスはパスを選択します。

即エンドゾーンに投げれば失敗してもFGを蹴る時間は残る算段だったのでしょう。

しかし、ここで前半の好調ぶりで調子に乗ったのか、エンドゾーン手前のヒルへパスをします!
!∑(゜ Д゜)

ヒルはレシーブするものの、エンドゾーンに届かず倒されてタイムアップ。そのまま前半を終了しました。

 

改めて見ると、ラン・パス・オプションでマホームズが自らパスを選択。しかし、目の前のエンドゾーンが詰まっている、かつ、残り5秒なので時間をかけてパス失敗だったら、FGを蹴れないので即座に横にいるヒルに投げて、ヒルの個人技に託したのでしょう。

しかし、結果はごらんのとおり。ベンガルズD#は即座に反応し、ブロックも付いていないヒルはその場で倒され時間切れとなりました。

 

このシーンに関してHC”アンディ・リード”は「エンドゾーン内に投げて欲しかった」と言っていますが、それ以前にFGで堅実に点を積んでおくべきだったと思います。

この取り損ねた3点が、最終的に勝敗を決める3点差になるとは、この時は予想はできなかったでしょう。

 

 

後半から状況は一転。前半好調であったチーフスのオフェンスが、後半に入るや否や全く機能しなくなります。

あれほどパスを通していたマホームズのボールの保持時間が長くなり、ボールを投げあぐねて逃げ回るシーンが目立つようになります。

さらに簡単なサイドライン際へのパスもオーバースローし、コントロールまで前半とは別人のように悪くなりました。

 

ベンガルズは何をしたかというと、パスカバーへ割いた人数を変えたのです。

ベンガルズは前半の4メンラッシュのゾーン主体のディフェンスから、後半は3メンラッシュのマンカバー主体に切り替え、残り8人をパスカバーにおいたのです。

3人といっても、ベンガルズはもとよりブリッツを多用しないチームで、DLはDE”トレイ・ヘンドリックソン”、DE”サム・ハーバード”などの単体のパスラッシュも強力です。

それに加えてただの3メンでなく、4メンに見せて一人はスパイなど手変え品代えマホームズを混乱させました。

 

分かりやすいのが以下のシーン。

TDを決めればチーフスが勝利するシーンにて、ベンガルズ決死のディフェンス。

あのマホームズがこれだけ長い時間を与えられても、全くパスを投げません。画面の見えないところで、レシーバーが全員抑えられているのです。

さらにDE”サム・ハーバード”がQBスパイでマホームズを監視しているため、スクランブルで前にも行けず、最後はそのスパイがダッシュでマホームズを潰しに来てファンブルフォースです。

 

さかのぼって、マホームズがインターセプトされたシーン。

ここはDE”B.J・ヒル”がディフレクトし、さらにインターセプトとするというファインプレーを見せますが、少数でしかラッシュが来ないと思ったら右からストレートにやってきて、それにマホームズが慌てて投げてこうなりました。

誰も相手にしてないOLが3人もいる裏でマホームズが2人に襲われている、滑稽な絵になっています。

 

結果、チーフスは後半開始から5シリーズ連続で得点なし。第4Q終了間際にやっとFGで得点し、ギリギリでオーバータイムに持ち込みました。

 

先のビルズ戦のように、オーバータイムで先行したチーフスがやっぱり勝つのかと思いきや、マホームズはインターセプトで自滅。なぜかカバーが2人もついているヒルにロングパスを投げます。

 

前半最後のヒルへのパスと言い、ヒルの超人的な個人技を過信しすぎて冷静な判断を欠いたこともチーフスの敗因に思えます。

 

 

チーフスのオフェンスが完全に停滞しているところでベンガルズが猛反撃。

QB”ジョー・バロウ”は相方WR”ジャマー・チェイス”を封じられても、自らのスクランブルで前進。

そしてレッドゾーンではチェイスが1vs1になるやTDパスを決めて第3Qには同点に追いつき、第4QにはK”エバン・マクファーソン”が52ydのFGを決めて、逆転しました。

 

オーバータイムでもK”エバン・マクファーソン”が31ydの決勝FGを決めて、ベンガルズが強豪チーフス相手に大逆転勝利を収めました。

K”エバン・マクファーソン”はルーキーでありながらプレーオフで1回もFGのミスはなく、非常に肝が据わったキッカーであることも話題になっています。

 

 

ベンガルズQB”ジョー・バロウ”のスタッツはパス23/38回250yd獲得、2TD、1INT。レーティング86.5。

2年越しでカレッジのQBとWRのホットラインを揃えたベンガルズの構想は、予想以上の成果を出して33年ぶりのスーパーボウル進出です。

このままスーパーボウルを制覇し、NFLの新時代の礎となるのか注目が集まります。

 

 

一方、18点差をひっくり返されまさかの敗戦となったチーフスQB”パトリック・マホームズ”のスタッツは、パス26/39、275yd獲得、3TD、2INT。レーティングは91.3.

後半からのベンガルズディフェンスにほとんどシャットアウトされてしまい、前半と後半の成績はまるで別人です。

先のビルズ戦では超人的なパフォーマンスを見せて勝利したものの、その超人軍団も分析と戦略の前に何もできなくなるという、NFLの面白さをまた一つ見た内容となりました。

 

こういう試合を見れたベンガルズファンが非常にうらやましい。

10年以上前のプレーオフで、ブレイディ様のペイトリオッツ相手にまさかの逆転勝利を起こしたジェッツの試合と似ているところがあり、あの興奮を思い出しました。