意識改革は今しかない
まだまだ毎日ニュースで報じられる日大のルールを逸脱した危険タックル事件。
もはや問題はタックルそのものより、大学における部活の在り方や、体制と指導方法に関する根深い問題が中心となっております。
[SPONSORED LINK]
関学大QBが復帰。その胸中を語る。
5月27日、大阪で行われた関西学院大学vs関西大学の試合にて、悪質タックルの被害にあったQBが復帰しました。
プレーに関しては
「けがの不安はあったがあまり意識せず、今まで通りプレーしようと思って、しっかり相手のディフェンスを見られて、落ち着いてプレーできたと思います。」
と、あのタックルによる後遺症やトラウマなどが無く回復できたことを話しました。
また直接の加害者である日大の宮川選手の対しては、
「直接謝罪を受けたときに、心苦しいというか、かわいそうだと感じました」
「会見ではもう、宮川君はフットボールをする権利が無いと言っていたんですけど、それはまた違うと思うので、またフットボールの選手として戻って、グラウンドで正々堂々とルール内でしっかりプレーして、また勝負できたらいいなと思います。」
と、宮川選手の復帰を求めております。
また、日大の「反則は指示していない」と宮川君の会見と未だ異なる事を主張している件に関しては、
「答えることができない」
と、メディアの注目度を理解しての的確なコメントをしております。
そして最後には
「スポーツ界すべてがフェアなプレーのルール内で、しっかりできるようになってほしい」
と、今回の事件のみならず、最近のスポーツ界における暗いニュースを問題に改善を求めています。
Mrサンデーにて、橋下徹が「危機管理」を語る。
5月27日のMr.サンデーでは、これまでのワイドショーでありがちの素人コメンテイターたちの普通の意見を超えて学生スポーツの在り方に関して、元大阪市長かつ元ラグビー部経験者の橋下徹氏や、G+の解説でもおなじみ関西学院大学OBの山田晋三氏を中心をゲストに大きく時間を割いて討論しました。
橋下徹 氏はまず、日大の初動の大失敗を指摘。その意見を切り取ると、
「まず問題が収束するか長引くかは初動対応で9割が決まってしまう。」
「日大が理事会や最高決定機関が何も議論せず何も方針が無いままで、いきなり会見することに、びっくりした。」
「危機管理の一番重要なところは、事実を安易に否定しないことです。」
「認める事実はまず認めて、言いたいことは第3者調査委員か何かでしっかり事実確認してから、言いたいことを言う。否定するなら否定する。」
「安倍政権の加計・森友問題と全く一緒。最初に「一切関与が無い」とか全部否定するから問題がどんどん延びていく。」
これはまさに覚えておくべき正論。これを直接日大のみならず安倍政権にも聞いてほしいぐらいです。
つまりは、まず「監督、コーチが指示した」という事を最初に認めていれば、ここまで大きな問題にはならなかったはず。そして宮川君が会見したから慌ててボロが出るような会見することで、さらに炎上するハメになりました。
これには学ぶべき部分が多いと思います。
悪質タックルの背景にはスパルタ体質。
日大は、内田監督という権力者の下に井上コーチがおり、その下にいる選手たちという図式。
これは、日大のみならず日本的な背景であることを番組では指摘しました。
権力者に対して真ん中にいる管理者は忖度し、真ん中は下に押し付ける。下の人間は「絶対に従わなくてはならない。」となり無理をして、最後は壊れてしまうなど被害を受けます。
そして権力者は「そんなつもりは無かった」というパターンとなります。
森友学園でも近畿財務局の人間が自殺しているので、この図式が当てはまります。
よもや社会人ではない学生たちを、このスパルタ体質から守らねばスポーツ界に未来はありません。
東大アメフト部・三沢監督が提起する今回の問題
途中から討論に参加した東大アメフト部監督の三沢英生 氏は今回の問題の本質を語りました。
1:運動部は大学の正規の活動ではない。
まず、
「運動部の活動は課外活動であり任意団体である。」
と、今回の事件に対して多くのコメンテイターが認識していない部活動の立ち位置に関する説明を行いました。
そして
「分かりやすくいうと、部活で人が死んでも組織として責任は取れないし、大学も課外活動だから責任を取れない よくわからない状況で学生は部活をやっている。」
と衝撃的な事実を述べます。
つまり、このことが日大学長が記者会見を行った意味につながるのです。
しかし、実際には大学は部活に責任が無いにも関わらず、部活をCMにバンバン使うという矛盾が生じているわけです。
2:日大だけでない、問題の本質は関東学生アメリカンフットボール連盟 (関東学連)
次に語られたのは、連盟の問題。
事件があった試合は、関学大は招待された関東学連の主催試合。つまり、関東学連は日大と同等の問題の当事者なのです。
しかし、事件数日後に簡単な処分を発表したのみで全く当事者意識が無いのです。
加えて、関東学連が主催しているので放映権やチケット代を得て利益を受けているのに、安全対策の義務を果たしていないことを厳しく指摘しました。
3:スポーツ界全体のガバナンス(統制)の問題
アメフトのみならず、レスリング、柔道、フェンシングといろいろな問題が起こっている日本のスポーツ界。
背景には学連のみならず競技団体全体のガバナンスの問題があり、例えばオリンピックでは代表を決めるのは競技団体が権利を持っているので、選手と必然的にパワハラの関係につながります。かつ、団体によって体制がグチャグチャ。
もはや「おかしい」事を「おかしい」という権利は選手にはなく、みなが危うい状況でプレーしているわけです。
なので、今回の問題を日大だけで終わらせるだけでなく、これをきっかけにスポーツ界全体のガバナンスを変えていかなければならないと、熱く語りました。
NCAAがスポーツのガバナンス(統制)の問題を解決するヒントになるか?
私たちNFLファンならば当然知っていると思いますが、アメリカの大学スポーツは学生を守るためにNCAA(全米大学体育協会)が統括しております。
今ではあらゆるスポーツを統制していますが、そもそもNCAAは1906年に当時のアメフトの危険プレーを取り締まるために創設されたのです。
NCAAは、試合を運営しテレビ放映権を独占。さらに大学よりも大きな権限を持っております。
その一例として2012年にペンシルバニア州立大学にて、アメフト部のコーチが性的虐待を繰り返し2011年11月に逮捕され、有罪判決を受けた時のこと。
そして第3者調査委員会調査報告で驚くべきことが発覚。監督・学長を含む大学の複数関係者がコーチの犯行を知りながら10年以上も隠ぺいしていたのです。
それに対してNCAAが課したペナルティは・・
- 罰金約48億円。
- 多額の収益を得られる試合の禁止(4年間)
- 隠ぺいしてからの勝利記録抹消。(現在は戻っている)
かつ、大学は迅速な組織改革を迫られたのです。
まさに今回の問題も日本にNCAAがあれば迅速に対処、収束していたハズ。
実は現在、日本版NCAAを作ろうという動きがあるとのことです。
もちろんアメリカのNCAAにも問題はあります。しかしNCAAの良いところを吸収して、日本版NCAAを構築しようと模索中なのです。
運命なのかNCAA設立もアメフトが発端。
日大悪質タックル問題をきっかけに、あらゆる団体の権力者全員がスポーツ界の問題を見直し、今こそ信頼が失墜している日本スポーツ界全体の抜本的な意識改革を行うべきなのでしょう。